風沼 風さんのカバー🎹する方とされる方

 YouTube で風さんの曲をまじめにカバーしている投稿がたくさん出てきた。ピアノカバーと、歌、または弾き語りもある。9歳からおばあちゃんまで、色々。以前からある採譜系の人と違う、カバーを目的としたチャンネル。結構 heavy・ deep なファンの人からも評判いいのもあり、幾つかは聞いてみた。残念ながら私には余り興味が持てなかった。中にはレベル高い、多重録音を駆使して、何種類も楽器もひけるし、というのもある。でも私にはもっともっとどんどん聞きたいという気にさせてくれるものではなかった。さらにテレビ番組で有名な歌手が歌ったのもあるが、申し訳ないが、風さんのうまさが際立つ結果になってしまったように思う。

 風さんのするカバーは初めて聞いた時からもうぞっこんだった。リアルタイムで何百回と聞いた曲でも全然違和感が無く、むしろコッチがいい!となった。ファンだからカバーも好きなのではなく、カバーを聞いて一層ファンになる、という順番。聞き始めて1年以上経ち、今聞き返すと荒削りな感じがするのもあるが、それは今の風さんの進化が大きくて、それと比べたらそりゃそうだよね、ということ。2018年の Weak と2022年のを比べたら何もかもが進化しているに決まっている。だから昔の投稿の時点で考えてみても、やっぱり風さんのカバーの魅力というのは抜きん出ている。今までも散々カバーについて書いてきたので、もうやめておく。

 

 で、風さんをカバーしている曲は何が違うのだろう。ここでは素人のしてみた系カバーはおいておいて、プロの人達のを考えてみたい。もちろん歌そのものが下手なわけではない。ギター弾き語りでしてみたという気軽なのもあるし、テレビ番組でガッツリ練習もして、カラオケで歌ってるのもあった。器楽アレンジで気合入ってますというのも。なんなら空お兄さんのもある。空さんは自分では歌わないので触れないでおくが。モノマネではなく、カバーとしての魅力を考えたい。

 風さんのカバーで一番大きいのは伴奏の魅力、結局ピアノのアレンジに尽きるのではないか。スペシャのカバー特番でコードに対するこだわりを遺憾なく発揮していたが、そのコードの構成を自分に一番合うように自在にアレンジして、時には外連味といえるくらいの風グルーヴの演奏で歌う。それに対し、風さんをカバーする人の歌は、こちらが風さんの声が好き過ぎるので歌そのものはおいておいて、伴奏が薄い。ピアノ一台(しかもチープな電気ピアノだった)より厚みが足りない、ように感じる。カバーCD 収録のプロになってからの曲になったら、もう比べようもない。そして多分CD 音源をカラオケにして歌ったとしても風さん程にはならないだろう。歌の巧拙ではなく、風さんが自分にマッチしたアレンジをしているからなのだと思う。だからもしかしたら、風さんが誰かその人のためにアレンジして(できれば)演奏してあげて、その人が歌ったら素敵なカバー曲が誕生するのかもしれない。まあそこまでするならオリジナル曲を作ってもらう方がいいでしょうね。

 配信の時や、現在のツアーでのリクエストコーナーではそこまで凝った演奏はしていない(はず)。知らない曲はその場でYouTube で検索してちょっと聞いただけで、歌ってくれるというのだから。耳コピが得意とは言え、即座にキーを取り、必要十分な伴奏を付ける。すごいですね。自分の歌でも歌詞があやふやになるのに、メロディーはちょっと聞いただけですぐ弾ける。音楽家としてはさほど特別なことではないのかもしれないが、そこに風味(カゼあじ&ふうみ)を効かせられるのが風さんの腕というか指といえるのだろう。